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古本屋エレジー

4月14日の日曜日、春分の日から始まった阿部海太個展「古本屋エレジー」が終了した。 昨年の8月、この世の終わりかと思うほど暑かった夏、阿部海太さんから、次回の展覧会はもう少し踏み込んだものにしたい、古本屋の言葉をテーマにした絵を描きたい、というメールをいただいた。私が文章を書き、海太さんは絵を描くというスタイルで一緒に展覧会を作りたい、というのだ。 いつもだったら、めっそうもないこととお断りするところを、ひょっとして、億劫がりの私でも海太さんと一緒であれば新しいことにチャレンジできるかもしれないという出来心が芽生え、やってみることに決めた。しかし私の怠惰の根は深く、そのまま四ヶ月が経ってしまった。 年の瀬、待ちくたびれた海太さんが話を聞きに金沢までやってきてくれた。海太さんと話していると、海で泳いでいるときみたいにのびやかな気持ちになった。とりとめもない話を受け止めてもらえるという安心感を得て、年が明けてから海太さんに「おはなし」を送り始めた。 一旦書き始めると次々に思い出されてきた。「おはなし」は、出会ったひとや本、出来事についての具体的な話が中心だったが、断片のいくつかは海太さんによって絵へと昇華された。相談の結果、絵に文はつけないこととした。要素は絵の中に溶けてる。必要ない。 搬入の日、海太さんの絵は私の想像を見事に裏切っていた。「ああ、あの話の絵だ」とすぐにわかる絵がない。 全然、全く、さっぱり、わからない! 愉快な気持ちになった。 それぞれの絵について説明は受けなかった。わからないから、わかりたかった。絵は毎日違った風に見えた。 その中に黄昏の古本屋の絵があった。DMに使用された絵だ。 陽は落ちてしまっているのに、 道はぬかるんでいるのに、 絵の中のひとは、身震いをひとつして勇ましく歩いて行くように思えた。 混乱する私は置いてけぼりだ。 2019年4月18日(木)