2019年もあと1週間となりました。
この店は築百年を超える木造の建物で、今年の冬もいつも通り寒い。
もう建物をあたためるのは諦めて、着込んで寒さをしのいでいます。
去年の年の瀬のこと。
年末の片付けをしていらしたのか、何回かに分けて少しづつ買取の本を持ち込まれる60代くらいの女性がいた。自転車に姿勢良く乗っているのを店の近くで時どき見かける。大柄なわけではないけれど、遠くからでも目につく毅然とした雰囲気の女性だ。私はいつも心もち緊張して応対していた。
何度目かの買取の際、当時店の一角にあった古着コーナーに目をやりながら「古着も扱っているのね。私も着ていない洋服があるんだけど、、、」と話しかけられた。
古着を買い取って欲しいということだと受け取り、「古着は買取していないんです。」とお伝えすると、「買い取ってほしいわけじゃないんだけど、、、。年末はいつまでやってる?」と尋ねられたので、「30日まで営業します。31日は営業はしませんが、私は昼間はお店にいます。」と答え、その後そのことを忘れていた。
大晦日。
道路には前日から降った雪が薄く積っていた。私はその年の営業を終えたという開放的な気分で、大掃除というにはほど遠い簡単な店の片付けをしていた。
昼が過ぎた頃、その方は大きな手提げ袋を携えていつものように自転車でやってきた。「はいこれ。私、もう着ないからあなたが着て。」とその袋を差し出す。(ん?あたなが着て?私が?着る?)突然のことに戸惑いながらも、大きな紙袋を受け取った。
中を見ると、青い毛糸で模様編が施されたニットのカーディガンが入っている。金の縁取りのある飾りボタンがついていて、肩パット入りのマダム風。丈が長く裏地もついているからボリュームたっぷりだ。マフラーも3枚、綺麗に折りたたんで重ねられている。
その方とはこれまで世間話すらしたことない。どうして急にカーディガンをくださったのだろうと、しばらく考えて、こう思いついた。
ご来店された際に、何度来てもお店が冷え冷えしていたので、きっと私のことを寒かろうと案じてくださったに違いない。それでマフラーも一緒にくださったんだ。
実際、そのカーディガンはものすごくあったかく、今年の冬は、頼もしい防寒具として愛用している。海のような青も私好みだ。
かさじぞうみたいに何かお礼をしたいと思っているけれど、あれ以来一度もご来店されていない。
2019年12月26日(木)