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紫陽花

わが家の紫陽花は青い。
小学校時代、教室には生徒が持ってきた花が飾られていた。ある日、庭の紫陽花がきれいに咲いたので、母はハサミでチョキン、チョキンと切って、デパートの包装紙にくるっと巻いて私に持たせた。しかし水揚げがうまくいかず、教室に着いた頃には花も茎も下を向いてしまった。

使い古しの包装紙の中でくたっと萎れた紫陽花。貧乏ったらしくみじめだった。友達は透明なセロファンに包まれたユリとかバラとか買ったお花を持って来るのに、自分の花がそうではないことが恥ずかしかった。持たせた母が恨めしかった。紫陽花は花瓶に入れても元の姿には戻らず、その日一日、うなだれた紫陽花を見ないように目を背けた。

去年の6月、シンガーソングライターの寺尾紗穂さんのライブを同志と企画した。朝、出掛けに庭で濡れそぼった紫陽花を見て、ライブで飾ろうと思いついた。家に戻りバケツに水をたっぷりはる。大きな花も小さな花も、やたらめったらに切ってバケツに挿していった。
紫陽花は絶対に萎れさせてはいけない。

はからずも、ライブの中で寺尾さんは「あじさいの青」という曲を歌った。庭の紫陽花はピアノの脇に飾られ、しっかり頭を上げて聴いている。あの時の思いが、時を経てようやく晴れた気がした。

ライブから一年経ち、紫陽花は乾いて白くなった。今年も6月にライブハウスのもっきりやで寺尾さんのライブが開かれる。

2019年5月4日(土)