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まだのうぐいす

今年の冬はおかしなことにさっぱり雪がない。
今日なんかもう春みたい。
生ぬるい風も吹いている。
そういえば、去年の今時分にも、こんな生ぬるい風が吹が吹いた日があった。
その日、寒くないから入り口の戸を開けっ放しにしていたら、
髪の長い女性が、片手を差し出すようにして、ずんずん店に入ってきた。
よく見ると、何かをそっと握っているようだ。

「道の真ん中で動かなくなってて、車にはねられたら危ないから拾ったの。
ここで預かって」
言いながらふわりと開いた掌には、深緑の、小さな小さな鳥がいた。
嘴から尾の先まで、手の腹にすっぽり収まっている。
女性の押しの強い物言いに少しひるみながらも、
あまりのかわいさにしばし見とれる。

どうしようか、困ったなぁ、、と考えあぐねていると、
そうだ、いい大きさの箱があった、と思いつく。
いただいたお菓子の小さな箱。
ちょうど鳥の巣みたいな緩衝材も入っていたから、
その上にそっと寝かし置く。

そのまま、外に出て鳥がいたというところに案内してもらうと、
にわかに鳥は身を起こし、
あっと言う間もなく飛んで行ってしまった。

店に戻り、『身近な鳥の図鑑』という本で調べてみたら、どうやら鶯のよう。
春に「ホウホケキョ」と鳴くあの鶯は、
春を待つこの季節にも、
すぐそこにいたんだね。
声は聞こえないけどいたんだね。

2020年2月13日(木)