古本屋になって、感覚的に仕事の半分くらいは本を運んでるような気がする。台車づかいがうまい人は本を山ほど載せて、ひょいひょいってな感じで軽々と運ぶ。
私は台車が苦手だ。小さな面積にうまく積めない。重いのが嫌だからたくさん積みたくない。台車は積み荷の安定性が低いし、道にはしばしば凹凸がある。私は段差で必ず荷崩れさせてしまう。8年前より少しはマシになっているのだろうけれど、未だに店の中でも体をぶつけて本を崩れさせることがある。
2013年の4月、赤池佳江子さんの個展「「シアター at ブックストア」を店にて開催した。本屋が出てくる映画の一場面を描いた展覧会だったのだけれど、その中に「全然大丈夫」という映画の絵があった。その映画には、古本屋で働くものすごく不器用な女性が登場する。転んだり、ものを落としたり、こぼしたり、それが流れ作業のように連続で起こったりする。その失敗の仕方は、はたから見るとあり得ないほど誇張されたシーンなのだろうけれど、私は、あるある!と我がことのように胸が痛んだ。
家に帰るとその女の子は、部屋で一人、雨の音が録音されたカセットテープを聴いていた。そういえば、雨の日、誰も来ない店の店番はいい。
いつまでたっても一丁前に台車を操れる日は来る気がしないけれど、こんなありさまでも古本屋なら許してもらえるような気がするのは甘えだろうか。
2019年4月30日(火)