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すみれが咲いた

8年前、開業したての頃、店の入口と道路の間に植物が生えていることに気付いた。コンクリートの間の隙間に根を張っている、いわゆる「ど根性」植物だ。
4月、その株から薄紫の小さな花がいっぱい咲いた。すみれだった。新米店主の私は店先に花が咲いたということだけで嬉しかった。

しばらくすると毛虫がわいて、葉っぱを根こそぎ食べてしまった。北側で日当りも決して良いとは言えない場所だし、葉も無くなってしまったので、きっと枯れてしまうだろうと残念に思っていたのだけれど、次の春も、その次の春も淡く小さな花を咲かせ、年を経るごとに株は増えていった。

そして毎年青々とした繁りを確かめるのが慣いになり、なんとなく縁起がよいような気がして友人に株分けをした。
その翌年、友人のお宅でプランターに植え替えられたすみれに再会し、驚いた。茎は細くしなやかに伸び、葉も花も上品に見える。本来の姿はこんなだったの!?育つ環境によって、たった一年でこうも変わるの!?まったく別の種類かと見まがうような姿になっていたのだから。

店のすみれは今年もぎゅっとひしめき合って咲き始めた。窮屈そうだけれど、ずんぐりとしてたくましく、それはそれは愛らしいのだ。

2019年4月20日(土)